Final walker 『世界に捧ぐ』

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失礼します。
2っちぇJAPANの
しゃあtheSkywalkerです。

 

今回のwalkerにて
『クイーンを愛したチーフの軌跡』
最終回を迎えました。

初めて見たぞ!
って方は今回の話を読まず
是非、最初から読んでみて下さい。

←しゃあtheプロローグ
「クイチー始めました」

 

3か月に渡る
クラクラ小説の連載を
書き上げる事が出来て

自分でも非常に
満足しています。

ありがとうございました。

クイチーの一覧

 

それでは
シリーズの最終話を
一緒に覗いてみましょう。

 

 

世界に捧ぐ

 

あいつと僕は
常に一緒だった。

同じオモチャで遊び
同じ友達と付き合い
同じ音楽を聴いて…

 

そう、僕達は同じ日に
天野家に生を受けた
一卵性の双子。

 
僕の名前は
天野 歩

「あゆみ」じゃなくて「あゆむ」

周りの友人達には
「ユーム」って呼ばれてた。

 
そして僕の双子の弟の名前は
天野 翔

「しょう」じゃなくて「かける」

弟は周りから
「ケール」って呼ばれてた。

 

弟は僕よりも
しっかりした性格で
周りからの人望も厚く
いつも皆んなの中心にいた。

だから2人でクランを作るとき
弟がリーダーを務める方が良いと
思ったんだけど

 
「リーダーは兄貴がやれよ」

 
なんて持ち上げられて
僕が就任したんだったな。

 

 

クラン名は弟が付けた。

「The March of the Black Queen 」

黒い女王の行進曲。
通称「ブラクイ」

最初は苦労したけど
早々にメンバーも増え
強いクランへと成長出来た。

「流星KID」クンや
「マル子」さん、
他にも面白いメンバーに囲まれ
ホントに楽しかった。

 
たまに弟とクランの方針について
チャットで揉めたりしたけど

ふとゲーム外に目を向けると
お互い目の前に居るから

「直接話そうよ」

ってなって
2人でよく笑ってた。

 

弟とは趣味がよく合った。

好きな食べ物や好きな服装、
クラクラにも同じように
2人でハマったし

好きな女性のタイプも
同じだった。

 

クラン内での恋愛は
ご法度だって分かってはいた。

とくに自分はリーダーという立場。
和を乱すような事は絶対にダメ。

でも
マル子さんへの想いは
日に日に大きくなっていた。

そして弟もマル子さんに対して
意識をしているのは明白だった。

おそらく僕の気持ちにも
あいつは気付いていたと思う。

 

その頃からかな。
お互いケンカをするように
なったのは。

確実にクランの雰囲気を
悪くしちゃっていた。

でもお互い
引くことが出来なかった。

 

とうとう弟は
「ブラクイ」を辞めて
クランを設立すると言い出した。

そしてマル子さんを
新クランへと勧誘してきた。

僕は絶対に
マル子さんと離れるのが
嫌だったけど

本人の判断に任せることにした。

 
マル子さんは
弟に気がありそうだったから
移籍を覚悟していたんだけど
意外にもブラクイに残ってくれた。

僕はホッとした反面
弟はかなり落ち込んでいた。

 

 

弟が立ち上げたクランは
「Great King Rat」

偉大なるラット王。
通称「ラット」

有名プレイヤーの「ケール」が
作ったクランということで

メンバーはすぐに集まり
強豪クランへと成長するには
時間は掛からなかった。

 

別のクランとなって
弟とは以前のように
また仲良く話すようになった。

マル子さんの事は
すっぱり諦めたようで

「ラット」の運営に
全精力を注いでいた。

 

「ラット」は国内最強と
噂されるようになった。

しかし弟は事あるごとに
「ブラクイに勝ってこそ国内最強」と
言ってくれていた。

2人で作ったブラクイを
弟は常に気にかけてくれていた。

 

いつしかクラクラ界隈では
ラット vs ブラクイの
対抗戦を望む声が増えてきた。

僕も弟も
「戦いたくないね」なんて
言っていたんだけど

僕達の考え以上に
お互いのクランの看板は
大きくなっていて

対抗戦は避けられないような
雰囲気が漂っていた。

特にラットのメンバーの中には
ブラクイに対するライバル心の強い人が多く
弟は対抗戦の開催を決定した。

「News of the World ‼︎」
 
世界に捧ぐ!
我がクラン「ラット」は
このたび「ブラクイ」との
国内最強をかけた対抗戦を行います!

 

弟が高らかに宣言をし
僕達の対抗戦は決定してしまった。

イベントの名前は
「In the Lap of the Gods 」

「神々の業(わざ)」ってか。

双子の僕らの戦いが
まるで運命によって
定められていたような名前だな。

ふふふ。
あいつらしいネーミングだ。

正直、勝つ自信は
全くない。

でも
あいつには負けられない。

何よりブラクイのメンバーに
国内最強の称号を与えてあげたい。

 
対抗戦の日程は
3月3日に決まった。

 

 

クラクラ界隈での話題は
来月の対抗戦で持ちきりだった。

キング vs クイーンと言う事で
「キンクイ戦」と呼ばれ
勝敗予想などで盛り上がっていた。

そんな中
「負けた方のリーダーは罰ゲームを」
との声が多くあがり

ちょっとやそっとの
罰ゲームでは盛り上がらない
雰囲気になっていた。

 
弟は周りの声を無視できず

「負けたリーダーはクラクラのアカウントを
完全に消去する」

と罰ゲームを決めた。

クラクラ界隈は
異様な盛り上がりに
包まれていた。

 

「兄貴、こんな事になってゴメン」

弟は僕に謝ってきた。

もう、お互いのクランは
引くに引けない状態。

仲の良かった僕達は
もう普通にゲームを楽しむ事が
出来ない立場になっていた。

 
アカウントの消滅が運命なら
潔く受け入れることにしよう。

僕は決心をしていた。

 

 

3月3日、
対抗戦のマッチングも
無事に成功し

いよいよ戦いが
始まった。

あの日も
今日と同じように
雲ひとつない晴天だったのを
今でも、よく覚えている。

 

大方の予想では
圧倒的にラット有利だったけど

僕達のメンバーも
よく頑張って食らいついていた。

しかし
なかなか差は埋まらず
試合は劣勢のまま
終盤を迎えていた。

 

こちらのエース達の攻撃は
全て消化しており

敗戦の二文字が
頭をよぎっていた。

 
「リーダー!まだ諦めないで!」

流星KIDクンが
こんな風に僕を鼓舞してきた。

彼はまだ
攻撃を2回残していた。

 
正直言って
彼の攻撃には
メンバーの誰も
期待していなかった。

しかし
ブラクイの勝利は
彼に託すしかない。

皆んな固唾を飲んで
流星KIDの攻撃を見守った。

 

 

 

普段の彼とは
別人のような攻撃だった。

見事に2回とも
全壊を奪ってしまった。
試合の流れを
完全に引き寄せることが出来た。

彼の活躍にメンバー大興奮。
チャットは滝のように
流れていた。

 

残り1分となり
こちらの攻撃は全て消化。

初めてリードを奪うことが出来た。

 
ラットの攻撃は
あと弟の1回のみと
なっていた。

弟は僕の村を
攻めてきた。

「天才ケール」の攻撃が
僕の村を全壊したら
ラットの勝ち。

星2つだったら
ブラクイの勝ち。

もう祈ることしか
出来ない。

 

弟は序盤から慎重だった。

普段は積極的なスタイルだから
意外な印象を受けた。

相当なプレッシャーを
感じていたんだろう。

 

見事な攻めだった。

しかし序盤に時間をかけ過ぎ
結果は99%の星2つ。

試合はブラクイが勝った。

 

 

「兄貴、良い試合だったよ。
楽しかった」

弟はそう言って
クラクラのアカウントを消去した。

そして
Twitterのアカウントも
消去すると言い出した。

皆さんに報告します。
先の対抗戦でラットは
ブラクイに負けました。
 
約束通り私のクラクラアカウントは
消去しました。
 
そして、このTwitterアカウントも
消去します。
今迄ありがとうございました!
 
God Save the Queen!!

 

弟は
何のためらいも無く
アカウントを消した。

「俺、クラクラは辞めないよ。
また1から始めるだけだよ」

と笑顔で言っていた。

 

 

クラクラのアカウントって
どうやって消すんだろう?

僕は弟に
聞いてみた。

 
ここの画面を出して…

ここのボタンを押して…

なるほど、
「本当に消去しますか?」

と文字が出てきた。

 
ここで「はい」を押すと
消えるんだな。

長年クラクラを
プレイしてきたけど
知らなかったな。

なんてことを考えながら
「いいえ」を押すつもりだった…

押すつもりだった…

しかし僕が押したのは
「はい」の方だった。

 

 

誤タップにより
「ユーム」アカウントは
消えてしまった。

これはマズイ。

すぐにTwitterを開き
事の説明をしようとした。

 

しかし
僕は思い留まった。

「ケール」の去り際に比べて
かっこ悪すぎる。

ちょっと正直には
言えないな。

そう思い
こんな風にツイートをした。

皆さん報告です。
ラットとの対抗戦で勝利しましたが、
アカウントを消した「ケール」に
敬意を表して
僕のアカウントも消します!
 
ブラクイの皆さん、
最後まで勝手なリーダーで
申し訳ありません。
 
今迄ありがとうございました!

 

こうして
僕達2人のアカウントは
消えてしまった。

もしかしたら
この結末も
「神々の業」だったのかも。

 

 

2人とも
しばらくクラクラを休憩した後

また新たに始めることにした。

 
弟は「Br. MAY」の名で
再開していた。

「Death on Two Legs 」(通称デスレグ)
というクランを作り
リーダーになっていた。

攻略動画を配信し
有名な動画配信者としても
成功していた。

 

僕も新しい名前で
クラクラを始めることにして
今の名前を付けた。

由来としては
本名の「天野 歩」から取った。

「天を歩く」ってことで
「スカイウォーカー」って
名付けた。

 

弟に負けじと
動画配信も始めた。

でも弟に比べて
腕も編集技術も劣るから
人気は全く出なかった。

「実は僕、あのブラクイのリーダーだったんです!」

動画の中で言ってはみたけど
今は無きブラクイの名を

最近の若者は
知らないらしい。

「僕はラットに勝った事があるんです!」

「今は落ちぶれてスマン!」

こんな動画を配信し続けた。

 

弟と比べて、かっこ悪いのは
自分でも分かっていた。

ただ、
ブラクイが潰れてから
行方が分からなくなってる
マル子さんの目に留まらないかな、

そんな思いで
配信を続けた。

 
しかし
マル子さんには
届いていないようだった。

 

 

 

僕も弟も35歳になり
仕事でもそこそこの立場と
なっていたけど

お互い結婚もせず
独身を貫いていた。

 
弟は大企業の
課長のポストに就いていた。

仕事の傍ら
クラクラと草野球を
嗜んでいた。

 

僕は仕事上
エリアマネージャーという
役職に就いていた。

「天野」って名前だから
皆んなから「天さん」って
呼ばれている。

 
マッチング部に
「丸山さん」っていう
綺麗な女性がいて

まさか
マル子さんかな?
なんて思ってたけど

そんな偶然ある訳ないと
勝手に思ってたんだ。

 
でも僕は
あるブログに出会ってしまった。

「マル子のクラクラ日記」

そこには
ブラクイでの思い出、
ユームに対する想い、
クランを潰す辛さ、

などが書いてあった。

 

そして最後には
「スパセルで働く」と
はっきり書いてあった。

やっぱりそうだったんだ。

 
僕が捜し続けた女性は
こんなに近くにいたんだ。

これも
「神々の業」なのかな。

 
ブログには
「母なる水星で待ってます」
と書いてあった。

そうか、
ブラクイのサブクランの存在を
すっかり忘れていた。

 

早速「母なる水星」を
検索してみた。

そこには1人で待っている
マル子さんがいた。

あの時から
何年も経つのに

僕の帰りを待っているとは。

 

 

僕は「母なる水星」には
入らなかった。

ブログにコメントだけを
残すことにしておいた。

 
「マネージャーの天」と
「ユーム」が同一人物ってことも

内緒にしておこう。

 

当時はリーダーとメンバー、
今はマネージャーとパート。

やはり一線は越えてはいけない。

 
僕は一生独身でいいや。

 

 

 

弟が病気になり
入院することになった。

お互い身寄りがないので
僕が身の回りの世話を
する事になった。

 
必要な物を買いに
何度もコンビニを訪れた。

1度、キャバ嬢っぽい女の子と
コンビニでぶつかった。

ケータイの充電器を探して
焦っているようだった。

ゴメンね。

最後の1個を
僕が弟の為に
買ってしまったんだ。

 

 

 

弟の最期には
立ち会えた。

生まれてから
ずっと一緒だったから

変な感じがする。

 

これから
葬式の準備をしなきゃ。

忙しくなるけど
もう頼れる人はいない。

自分がしっかりしないと。

 
そんな事を考えながら
電車に乗ろうとした時だった。

 
「課長〜!課長〜!」

 
1人の若者が
僕の元に駆け寄ってきた。

どうやら
弟と同じ顔の僕を見て
間違えたのだろう。

 
「ゴメンね。僕は君の課長では無いよ」

 
若者は
泣き出しそうな
表情をしていた。

 

「会社では嫌われ者だから」

いつも弟は言っていたけど
こんなにも必死に
駆けつけてくれる部下が
居るじゃないか。

あいつはやっぱり
慕われる性格なんだよ。

 

 

 

弟の棺の前で
僕は1枚のレコードを持って
立っていた。

 
弟は昔から

「俺が死んだらオペラ座の夜
一緒に棺桶へ入れてくれ」

ってよく言ってた。

 
「オペラ座の夜」とは
イギリスのロックバンド
「クイーン」の4枚目のアルバム。

あいつはホント
好きだったよな。

 
てか
あいつの人生を
思い返してみると

ほとんどがクイーンに
関連付けている。

 
「The March of the Black Queen 」
「Great King Rat 」
「Death on Two Legs 」
「In the Lap of the Gods 」
「News of the World 」
「God Save the Queen 」

全てクイーンの曲名や
アルバムのタイトルから取ってる。

 
「母なる水星(マザーマーキュリー)」
って名前も
ボーカルのフレディマーキュリーが
よく歌詞の中に使ってる言葉。

「Br. MAY」って名前、
皆んな「ブラザーメイ」って
言ってるけど

実際には
ギタリストの「ブライアン・メイ」から
取った名前なんだよな。

 
ここまで徹底してる弟は
ある意味すごいと思う。

 

 

葬式も終わり
空を見上げてみる。

雲ひとつない晴天だ。

 
弟は天に翔け上がった。

 
短かったけど
内容の濃い人生だったんじゃ
無いかな。

そんな弟の一生を
多くの人々に伝えてみたい。

そんな衝動が湧いてきた。

 

もう、くだらない動画の配信は
やめにしよう。

弟をモデルとした
クラクラ小説を書くことにしよう。

 

書き出しは
こんな感じで
もう決まっている。

『今から私が記すこの物語は、
クイーンを愛したチーフの軌跡である…』

 

 

終わり

 

 

←11th.walker
『広いネットの片隅で…』

しゃあtheエピローグ→
『クイチー裏話』

 

しゃあtheSkywalkerしゃあtheSkywalker

しゃあtheSkywalker

クラン
2っちぇJAPANのリーダー
 
2013年10月にクランに入り
2014年4月にリーダー昇格。

「自称ゆるくても勝てるクラン」
ってブログ書いてます。

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