8th.walker「チームワークの代償」

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R10

失礼します。
2っちぇJAPANの
しゃあtheSkywalkerです。

 

2013年
ヤクルトスワローズの
バレンティン外野手が

王貞治氏の
シーズン55本塁打の日本記録を
大幅に越える
60本の日本記録を作り
セリーグのMVPに輝きました。

 

ただ、この年のスワローズは
セリーグで最下位の成績で
最下位からのMVPは
史上初の事でした。

僕は優勝に最も貢献した選手が
MVPに相応しいと考えているので
最下位からの選出に
少し違和感を感じました。

 
いや、バレンティン選手に
ケチを付ける訳ではありません。

優勝チームの選手以上に
素晴らしい成績だったと
いうことですから。

 
でも、もしチームが
優勝争いをしていたら…

当然、相手チームの投手は
エース級が投げて来ますから
簡単には打たせてもらえません。

勝負どころでは敬遠も
増えることでしょう。

果たして、その状況で
60本も打てたでしょうか?

 

夏太郎
あの…しゃあさん、
クイチーですよね…
しゃあ
おお!夏さん!
今日は宜しくお願いします♪
夏太郎
今回はデスレグの話だと
聞いて来たんですけど…
しゃあ
はい!デスレグのメンバーが
野球をする話です!
夏太郎
や、野球ですか?
クラクラはしないんすか?
しゃあ
まあ、一緒に
覗いてみましょう♪

 


 

長に誘われたのは
12月だったから
もう3カ月も前のことか…

僕がマウンドに立っているなんて
あの頃からは想像もつかないや。

 

 

僕の所属しているクランは
「Death on Two Legs」
という超有名クラン。

直訳すると「二本足の死」ってなるけど
どういう意味なのか分からない。
「死神」ってことかな?

周りからは「デスレグ」
呼ばれているんだ。

リーダーの「Br. May」さんは
超人気の動画配信者で
僕がこのクランに入れたことは
奇跡に近いと思う。

メイさんは
とっても優しくて面白い。
仕事の愚痴も聞いてくれる。

こんな上司だったら
どんなに良いことか…

うちのクソ課長は
クソ堅物でクソ厳しい。

 
あっ、ヤベェ。
課長がこっちに来た!
クラクラしてんのが
バレたかな?

image

 
「おい、ちょっといいか?」

 
うわぁ、何だよう。
また何か怒られるんかなぁ。
 

「お前、俺の野球チームに入れ」

 
えっ?野球チーム?
そういえば課長は草野球チームの
監督をしてるって言ってたな。

話を聞いてみると
3月にリーグ戦が始まるから
試合に出ろ、との事。

まだ返事をする前なのに
話はどんどん進んでいく。

課長、いつもこんな感じなんだよな。
こっちの意見は全く聞かずに
勝手に決めていってしまう。

 
「お前、グローブくらい持ってるだろ。
これから毎週土日の朝6時までに
河川敷のグランドに来い」

 
はあ!? 朝の6時〜?
ふざけんな、冗談じゃない!

しかもリーグ戦は3月からだろ。
まだ今は12月だぞ。
でも逆らえる訳ねえか…

くそ!なんでこんなことに
なっちまったんだ…

 

 

image

土曜日、
僕は自転車を漕いで
河川敷に向かう。

入社3年目の僕にとって
休日は会社の事を忘れて
リラックスする大切な時間。

よりによって課長と
顔を合わすなんて…

 
「おう、時間通り来たな。
まずはストレッチからだ」

 
課長の命令だから
時間に遅れてはいけないと思い
早め来たのに
課長は僕より早く来ていた。

入念にストレッチをしたと思ったら
今度はグランドの周りを
ランニングさせられた。

週末の朝っぱらから
オッサンと並んでランニング…
何してんだか。

ランニングが終わり
やっとキャッチボールをする事に。

 
「思いっきり投げるなよ」

 
課長はそう言って
かなり近い距離で
キャッチボールを始めた。

軽く投げ合って
少しすると

 
「今日は終わりだ。明日も来い。
あと平日の出社前にグランドを
走ってから会社に来い」

 
と課長は僕に言って
帰っていった。

何だよ!これだけかよ!
ほとんどストレッチと
ランニングしかしてねぇ。

しかも出社前にランニング?
嘘だろ?マジかよ。

ちくしょう!
こんなのパワハラだ!
訴えてやる!

 

 

それから僕は毎日
河川敷に来てランニングしてから
会社に行くようになった。

土日は課長も来て
ランニングの後
軽めのキャッチボールをする。

そんな感じで
2週間が過ぎた。

 

 

「そろそろ長い距離を投げてみよう」

 
課長はそう言って
僕との距離を長くとった。

ヤベェ。
球が逸れてしまった…

僕は慌てて拾いに走る。

すると可愛い女の子が
ボールを拾ってくれた。

あの子いつも来ているな。
犬の散歩のようだ。
ちょっとキャバ嬢っぽいから
夜の仕事してそう…

そんな事を考えながら
キャッチボールを始める。

球の握りが悪いと
課長はすぐに寄ってきて
僕を叱る。

課長曰く
「球筋を見ればすぐ分かる」
との事。

握りくらいで
いちいち細かいな。

でも最近自分でも
いい球筋と悪い球筋の違いが
分かるようになってきた。

 

 

今日の課長は
クーラーボックスを持ってきた。

この寒い中、
冷たい飲み物でも持ってきたんか?

 
「今日はピッチングをしてみよう。
右足で思いっきり地面を蹴って
投げてみろ」

 
僕は言われた通りに
やってみた。

蹴った後の左足が
踏ん張り切れず転んでしまった。

何回やっても身体がよろけて
投げるどころでは無かった。

 
「下半身がまだまだ出来て無いな。
どうだ、ランニングの必要が分かったか」

 
僕は悔しかった。
だから何度も繰り返し投げた。

だんだんコツを掴めて来たから
課長のミットを目掛けて
思いっきり投げてみた。

ドン!

今のはいい感じだった!
右足で蹴って
左足が踏ん張って
かなり速い球を投げることが出来た!

 
課長も喜んでくれた。
その後に何回か投げて
練習を終わらせた。

課長はクーラーボックスから
保冷剤を取りだし
僕の肩を冷やし始めた。

何だよ。大袈裟だな。
プロのピッチャーじゃないんだから。

 
しかし今日は感触が良かった。
あんな速い球を投げれるなんて。
もっとランニングをして
下半身を鍛えないとな。

グランドまで来なくても
家の近くをランニングしても
良いかと課長に聞いてみた。

 
「ダメだ。ロードワークはまだ止めろ」

 
何?何でダメなんだよ。
グランドにくる時間が
勿体無いじゃないか。

課長曰く、どうやら
「膝を痛めるから」らしい。
ジジイじゃ無いんだから
大丈夫だって。

 

 

ランニングシューズを買うという条件で
ロードワークの許可を貰った。

「安いのは絶対に買うなよ」

と言われたから
結構、値の張るものを買った。

まだまだ安月給の身。
クラクラに課金したいところなのに。

 
毎日のランニングの成果かな。
ピッチング練習も様になってきた。

自分でも驚くほどに
速い球が投げれるから
何か楽しくなってる自分がいる。

 
「お前は速い球を投げようとして
腕に力が入り過ぎている。
腕は力を抜いてブランブランにしろ。
いいか。ピッチングとは足で投げる事だ」

 
言ってる意味が分からなかったけど
言われたように投げてみた。

難しい。

何度も繰り返し投げてみた。

すると腕がムチのように
しなるのが分かった。

 
「いいぞ。その感覚を覚えろ。
そして最後に指先にだけ力を入れろ」

 
僕は左足を大きく上げ
右足で思いっきり地面を蹴った。

踏み込んだ左足が踏ん張り
ブランブランの右腕は
ムチのようにしなり

投げる瞬間に指先で
ボールを引っ掻いた。

 

シュルルル〜

スパ〜ン!

 
僕の投げた球は
地を這うように放たれ
課長のミットに吸い込まれた。

何だ、今の球…

僕が呆然といていると
課長はうずくまっていた。

「うぅ…うぅ…」

痛かったのかな。
確かに凄い球だったしな…

よく見ると課長は泣いていた。
「間に合った…間に合った…」
と呟きながら。

 

 

課長の涙を見て
リーグ戦への思い入れを感じた。

しかし課長は練習に
来なくなった。

僕のケータイに
練習のメニューを送って来るので
1人でやるようになった。

 
会社でも課長の姿を見なくなったので
他の上司に聞いてみると

3月いっぱいで
会社を辞めると言われた。

で、今は残った有給を使って
もう会社には来ないらしい。

何だよ!自分勝手だな。

僕は怒りが込み上げてきた。
すぐに課長にメールを送る。

「これからは好きな野球のために
たっぷり時間を使えるな」

なんて返事が返ってきた。

4月からは仕事どうするんだろう?

 

 

3月に入り、リーグ戦の案内が
課長からメールで送られてきた。

グランドに行ってみると
結構な人数が集まっていて
それぞれにアップをしていた。

image

今日も課長はグランドに顔を見せない。

キャッチャーの安達さんに
ボールを受けてもらった。

 
「ナイスボール!この短期間で
良く練習したね!凄いよ」

 
試合が始まり
真っさらなマウンドに立つ。

この僕がマウンドに上がるなんて
3か月前では想像もつかなかったな。

 

 

試合には勝った。

僕の球はほとんど打たれなかった。
投げる前は不安でいっぱいだったけど
自分の球に自信が持てた。

 
ただ…楽しくは無かった。

ベンチの中の隅っこに座り
投げる時だけマウンドに上がる。

知らない人ばかりだから
仕方がないか。

 

 

安達さんから
試合のビデオを見せてもらったぞ

課長からメールが届いた。
ピッチングに関して凄く褒めてもらった。

僕は数試合を投げて
まだ1点も取られていない。

チームも開幕から連勝して
凄く盛り上がっている。

そう。僕以外は…

 

このままでは野球を楽しめないと思い
少し自分を変えてみる事にした。

皆んなより早くグランドに行き
道具の準備をしてみる。

試合中ベンチの中では
大きな声で盛り上げてみる。

こんな事を続けてみた。
すると、

 
「ナイスピッチ〜!」

 
自然とチームメイトから
声をかけられるようになった。

何だかチームの一員になれた
そんな気がした。

 

 

風のウワサで
課長は体調を崩して
入院していたと聞いた。

僕はそんな事、全く知らなかったので
課長にメールして聞いてみた。

しかしメールの返信は来ない。

病院だからケータイを
使えないのかな。

まあ、お世話になったのだから
お見舞いに行くことにした。

 

 

image

病院名と病室を上司に聞いて
伺ってみた。

受付で聞いてみると
昨夜お亡くなりになったと言われた。

ウソだろ?
ちょっと前まで一緒に
野球してたんだぜ?

僕は何度も受付の人に尋ねた。
人違いじゃ無いかと。

 

 

頭の中が整理出来ず
駅まで歩いた。

病院の名前を聞き間違えたのかも。
多分そうだ。だって有り得ないんもん。

 
image

 
ふと見ると駅の改札に
課長の姿が見えた。

やっぱり死んだなんて
間違いだった!

 
僕は人混みをかき分け
必死に追いかける。

「課長〜!課長〜!
ハア…ハア…」

息を切らしながら
やっと追いついた。

 

「ゴメンね。僕は君の課長では無いよ」

 
その男性は優しく僕に答えた。

確かに良く似てるけど
別人のようだった。

ははは。
こんな見ず知らずの人を
必死に追いかけるなんて。

どうかしてるぜ。

 
その後、僕は安達さんに電話をして
課長の死が本当だったと聞かされた。

 

 

カキーン!

ホーム!ホーム!

 
グランドでは野球の試合が
今日も盛り上げている。

僕は課長の死を
まだ受け入れられずにいた。

 
ベンチ内で安達さんが
僕に話しかけてきた。

「僕の下の名前はヒトシって言うんだ」

突然何を言い出すのか
僕には分からなかった。

 
「安達ヒトシ。略してダチヒト

 
ダチヒト?
その名前はよく知っている。

 
「もしかしたらデスレグの
サブリーダーさんですか?」

「そうだよ。君のクランのサブリーダーだよ。
そして監督、君の課長がリーダーのメイさんだ」

 
何だって?
あの優しくて面白いメイさんが
あのクソ課長だって?

そんな馬鹿な!
信じられない!

 
安達さんは静かに
事の経緯を話し始めた。

 

 

クラクラでの僕のプレイは
光るものがあり、
メイさんやダチヒトさん達は
非常に高く評価してたらしい。

しかし僕の最大の欠点は
自分本位の身勝手さのようで

クランのメンバーへの
気遣いが出来て無かったと言われた。

 
僕はデスレグには必要な人材みたいで
どうにか欠点を直そうとメイさんは考え

野球を通じて
チームの大切さを伝えたかったらしい。

 
しかしそんな中
自分の病気が相当悪くなり
僕が試合に出られるように
焦っていたのだと言う。

 

安達さんの話を聞いて
僕は課長の涙を思い出した。

 

「うぅ…間に合った。間に合った…」

 

 

 

課長、いやメイさん。
遠回し過ぎますよ。

人生の最期の時間を
全て僕なんかの為に費やすなんて。

どんだけクランの事を
愛しているんだよ!

 
涙が止まらなかった。

 
勝手に死にやがって!
やっぱりアンタは
クソ課長だったよ!

 
涙が後から後から溢れて
試合どころでは無かった。

 

メイさんの想いを
無駄には出来ない。

ホントはもう少ししたら
クランを抜ける予定だったんだ…

でも、ここまでされたら
デスレグの為に頑張ろう!

そう、心に誓った。

 

僕はケータイを取り出し
スパセルにメールを打ち始めた。

【潜入調査報告】
 
数ヶ月にわたる調査の結果、
リーダーのメイさん、及び
デスレグの他メンバーにも
チートの使用は見つかりませんでした。
 
素晴らしいクランという感想です。
調査は終わりましたが
引き続き世話になろうと思います。

 

野球もクラクラも
これからは僕が引っ張って行くぞ!

 

 

夏太郎
野球もクランも
チームワークって大事ですね
しゃあ
夏さんは前任のリーダーから
クランを押し付けられたんでしょ?
夏太郎
そうですよ。
立て直しに苦労しましたよ…
しゃあ
僕もそうなんですよ。
朝起きたら突然リーダーに
なってました。
夏太郎
ホントっすか?
しゃあ
はい。苦労しました。
でも今は良かったと思ってます
夏太郎
ですね。
リーダーの楽しさって
ありますよね。
しゃあ
これからもクラン運営
頑張りましょう
しゃあ
以上、失礼しました。

 

←7th.walker
『昼夜逆転クランリーダー』

9th.walker→
『ハスクバーナで身を固め…』

 

しゃあtheSkywalker

しゃあtheSkywalker

クラン
2っちぇJAPANのリーダー
 
2013年10月にクランに入り
2014年4月にリーダー昇格。

「自称ゆるくても勝てるクラン」
ってブログ書いてます。

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