365日誕生日クマさん|泣くなぐ|クラクラ

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K1-3

ここまでの”泣くなぐ”一気読み

京都か。
満は眠い目をこすりながら呟く。
如何やら寝入っていたようだ。
品川までは記憶があった。

無理もない、来月リリースのスパセル新ゲーム「クラッシュポチョムキン」通称クラチョの準備に追われ、ここ何日かはろくに睡眠をとれていなかった。

「後15分ほどで梅田に着く」

メールの相手は高校からのくされ縁。
微笑のポチョムキンだ。

俺はお前をフォローしないよ。という言葉をいつも微笑みながら頷くポチョムキンを俺は嫌いではない。

実はポチョムキンと古い友人だと小鳥遊が知ったら、どんな顔をするだろうか。などと考えると自然と笑みがこぼれる。俺も性格が悪いなぁと心の中で呟く。

いつもの喫茶店の、
いつもの席にポチョムキンは座っていた。
相変わらず時間を守る男だ。
全く昔と変わらない。

「おう」

おう

お互いを知り尽くしている二人だ。
多くを語る必要はない。

「ウチにお前をフォローしろって五月蠅いのが居てさ」

ああ、俺にコンタクト取ってきよったわ。小鳥遊さんやんな。」

「もう接触してるのか、本気だなぁ。」

「ああ、本気やな。上手い事やってオフパコしたろっかなww」

相変わらず適当な事を言うが、この男がそんな事をするはずはないのは俺が一番よく知ってる。

昔から軽いノリなのに1本筋が通ってる。決して人を裏切らない。そして奥さんを愛しているのが良くわかる。ポチョムキンぺろぺろ。

この男をフォローしないことはクラクラ日本公式にとって大きな痛手ではないのか。

ある程度成熟期に入ったクラクラはよく言うと安定、悪く言うとすこしマンネリ化している。

そんなクラクラを思えば、この男をフォローすることはそれなりの話題になるし一つもマイナスではない。

ならなぜフォローしないのか。
それは俺がガンダムを嫌っていることもあるが、実はこの男から言われているのだ。

フォローせえへん方が面白いやん?俺のラブコールが届かへんって体のほうがネタになるし。」

本当にこの男は昔からそうだ。
いつも俺を振り回す。
面白いから、という理由で周りを巻き込む。
まぁ俺は喜んで巻き込まれているんだけど。

俺をフォローするときは、ちゃんと準備して面白い企画を立ててからや。そのほうが盛り上がるし

その時まで、お前のファンだと言い切る小鳥遊を抑えるのは俺の役目なんだぞ。

などと愚痴ってもこの男はどこ吹く風だ。

あの時もそうだ。
俺はこの男に振り回された。
高校二年の夏。

コレ、流行ってるらしいな。

365日バースディベア、とでもいうのかな。365種類の(服などで違いを付けていた)小さな熊のぬいぐるみに小さなタグが付いていてそこに誕生日が書いてある。みんな自分の誕生日の熊さんを探していた。

俺の誕生日の熊さんが欲しい!

なんでお前の熊さんを探さなければならないんだ、と思いつつも従ってしまうのはこの男の押しの強さか、俺の意思の弱さか。

とりあえず二手に分かれようや。

何をとりあえずなのか解らないが、言われるままコンビニをまわって3月14日を探す俺。なんなんだ。

もう3件目だ、やはり無い。
と、店員の女の子が喋りかけてきた。

「熊さん、何日をお探しですか?」

どきゅーーーーん!

笑顔が可愛い。
えくぼに、やられてしまった。
えくぼに、やられてしまった。

「…えっと、3月14日です。」

ホワイトデイですねぇ。
と言いながらなぜか一緒に探してくれる。

「私の熊さんも探してるんですが、見つからないんですよね」

突然のことでどう返していいかわからない。
とりあえず返事だ、返事。

「えと、何日です?」

「3月3日です。」

ひな祭りですね、
と今度は彼女の誕生日熊をさがす。
ポチョムキン熊なんてどうでもよくなった。

しかし、結局どちらも見つからなかった。

「ないね、ありがとう。諦めます。」

たったそれだけのやり取り。
俺は、彼女に惚れてしまった。

本当は3件目で終わろうと思っていたが、4件目、5件目もまわった。

そして6件目に、見つけたんだ。

「ほほう3月3日ですか」

!!!!

ポチョムキン!なんでここに。

「いやはや可愛い子やったなぁ。そりゃ俺の熊なんてどうでもよくなるわなぁ」

いや、あのその。

「なにボサっとしとんねん。早くもってけや。あの子に。」

この男にこうやって背中を押されなかったら。
もしひな祭りの熊をみけたとして、
それを彼女に渡せたかというと多分無理だ。
見つけただけで満足してそれでおしまい。
それが大和川満って男のいつもの姿だ。
俺は、勇気がないから。

「ええから行けって!!」

おおおう。

3件目のコンビニに戻り、適当に飲み物を見つくろうとあの子がレジにいた。

俺に気付くと笑顔になった。
えくぼが可愛い。

「熊さん見つかりましたか?」

まっすぐな目で、俺を見つめる彼女。
(いえ、言うんだ!大和川満よ!!)

……

………

「これ、偶然見つけて…」

熊さんを差し出す俺。

すると彼女ちょっと驚いて
そして今日一番の笑顔で言った。

「実は私、持ってるんですよこの熊さん」

!!!?

「ああいえば、もしかしたらあなたと繋がるかなって。嘘ついちゃいました。」

この出来事が、俺を変えた。
ポチョムキンに背中を押されて、彼女に熊を渡さなかったら俺はずっと奥手のままだっただろう。

俺は、ポチョムキンを今はまだフォローしない。
それをこの男が望むなら。

小鳥遊よ、
お前はポチョムキンのファンだというが。

ポチョムキンファン第一号は、きっと俺だよ。

 

 

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