いつか2人でイキたいね 雪が積もるコロニー | 泣くなぐ |クラクラ

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NN20

ここまでの”泣くなぐ”一気読み

「ろ…ロマネスク…」

木村くんの口から呟きが漏れる。

「え?ああ、なんだって?」

しかし哲夫は目線をピクリとも動かさずに応答した。
いいや、ただ目線を動かさなかっただけではない、 『横にしたスマートフォン』から目線を離さなかったのを木村くんは見逃さなかった。

”間違いない、こいつは承認からの流れで良子とクラチャをしている。
” 木村くんは以前から、哲夫を痴漢マエストロと仰いでいた。

己が師、哲夫の仕草、行動の癖、好みなど…
彼の全てを知り尽す木村くんにとって、『自分は興味を持たれていない』という辛辣な事実に気づく事は非常に容易かったのだ。

――そのとき。

木村くんの中に、ポチョっと黒いアレが滲みでた。
最初は、ほんのちょっと。
そして、急速にその”嫉妬”は広がっていった。

 

「いつもっ…!」
「いつもそうだ…!あんたはっ…!」

 

木村くんの口から、堪えきれなくなった怨嗟が溢れだす。

 

「僕に痴漢の道を教えてくれた時もそうだった!!」

 

止まらない。

 

「あんたは!僕のことなんて結局はどうでもいいんだ!!」

 

切望していた再開だっただけに、止められない。

 

「久しぶりに会えた僕よりも!さっきの女か!」

「あんたは!!女性の心の棘なんて抜いちゃあいなかったんだぁっ!!」

 

最後は叫びだった。
悲痛な、叫びだった。

すると、哲夫はようやくゆっくり画面から目を離し、じっと木村くんの目を見つめた。

 

「あっ…!」

 

目があった瞬間、木村くんは途端に恐ろしくなった。
自分は勢いに任せて、
”絶対に言ってはいけない一言”を言ってしまったのではないだろうか…、と。

 

「す…すみませんでしたっ!!」

 

木村くんの口から謝罪が飛び出す。
それを確認すると、哲夫はゆったりと首をかしげて、天を仰ぎ、こう、呟いた。

 

「ゴーレムはそっと、壊れ物のように扱うといい。
でも、WBはもっともっと優しく。愛でるように出そう―」

 

―パリン 心の何かが砕けた音が、木村本人だけに聞こえた。

元々木村くんは、落書きだけが得意な地味な子供だった。

それがひょんなことから他人にその絵を評価される機会を得て、沢山のRTをもらった。
公式からもRTをもらったしフォローもされた、ぶっちゃけ自慢だ。
超むかつく。
嬉しかった。
初めて自分が社会に評価された気がした。
持て囃された気持ちは大きくなり、膨張し、その内自己顕示欲が溢れだした。
もっともっと褒められたい、認知してもらいたい、有名人になりたい――

結果、欲望に塗れて描いた絵は段々彼本来の味を失っていき、
手の届きそうだった名声は遠く離れ、
自分らしい絵などは彼方へ消え去っていった過去があった。

そんな木村くんは、いつしかJR環状線で痴漢を日課とするようになっていた。

むしゃくしゃしていたのだ。

自分の思いの丈を”痴漢道”という新しい場所で発揮しようとしたのだ。

”自分はまだやれる、落ちぶれてなんかいない”

”今までは絵を通して表現していた自己を、痴漢を通して表現しきってみせるっ…!”

”痴漢こそ真のアート!”

そういった荒ぶった心こそが木村くんの痴漢道の原点であり、彼を突き動かす所以だった。

そう、彼は痴漢を始める前から、酷く酷く傷ついていたのだった――

「壊れ物のように…優しく…?」

木村くんはハッとした。
この男はどこまで見通しているのか。
この場合のゴーレムは自分…、WBは女性の暗喩…。

女性を優しく扱うのは元より、『自分にも優しくしろ』と言うのかっ…この男は…っ!

どこまで、どこまで…この男は僕の心をかき乱せば気が済むんだ…っ!
堪らなくなり、木村くんは哲夫に問いかけた。

「こんな…醜い僕が…どう許されれば良いのですか…?」

哲夫は応える。

「いやー、今のどう?言い方的に。勿論、良子な?かっけーかな?ふへへ」

『良い肩…』だって…?

『勿論、良好な関係』…だって…?

木村くんはゴクリ…と生唾を飲み込む。
哲夫が肩フェチなのは知っている、本人が以前が話していた。

つまりこれは…『求愛』

哲夫から木村くんへの『求愛行動』に違いない。
動揺する木村くん。
つい、震える手からスマートフォンが落ちる。

「あっ、木村くんスマホ落ちたよ、ポケットにこうやってちゃんと入れておかないと」

哲夫が拾い上げたスマホを木村くんの尻ポッケに突っ込む。

 

―――アハン…////

 

そのさり気ない臀部へのタッチは、優しく木村くんの心に触れた。
深々と刺さる木村くんのどす黒いトゲは、哲夫のタッチで抜かれたのだった――

「で、どうかな?どう思うかな?さっきのやつ」

この哲夫の問いかけに対し、もはや木村くんの心は固まっていた。
心のトゲを抜く、真の痴漢道を見たのだ。

もう、これしかない。

 

「い…挿れて下さいっ!!!!////」

「ええ?あ、クランにね、いいよー、申請して?」

 

――木村弾丸丸 が ネコふんじゃった に 参加しました

 

哲夫と良子と木村くん、三つ巴の彼らの関係が一つのクランでどう混ざり合うのかまだ、誰も知らない。

そしてこの回は実はとあるゴーストライターが手がけている事はポチョムキンしか知らない。

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Quwrof

右投げ右打ちのサイドスロー中継ぎ投手。

座右の銘は「人のにぎったオニギリは味わわない」
とにかく早々に口腔を通過することに専念する。

クリプロのコンダクターでいて、LinkJPクラングループのリーダー。

特技は、活きたイカを殺すこと。
2本の指で確実に仕留める、イカ最大にして最強の敵。

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