品川で誘って京都で降りて|泣くなぐ|クラクラ

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ここまでの”泣くなぐ”一気読み

何でポチョムキンをフォローしないんですか!

今日も小鳥遊は満に詰め寄る。
先日のゴブリン満事件(すき屋でアンケート)以来、小鳥遊の中で満は身近なものに感じられた。

ただの偏屈なおっさんじゃなかったんだ。
満の実力は知っている。的確に部下に指示し、本国クラクラ公式との折衝力も申し分ない。部下の信頼も厚い。

ただ、なぜかポチョムキンフォローに関しては全く首を縦に振らない。何か、あるのだ。

頑なにポチョムキンを拒むその姿に、偏屈で頑固なイメージが小鳥遊の中に出来上がった。

しかしすき家事件を動画チームリーダーから面白おかしく聞かされると、なぜだか笑ってしまう。

可愛いじゃないかゴブリン(笑)
それ以来、ポチョムキン推しを迫ること自体は変わらないがどこか親しみをもって迫っている。と小鳥遊は思っている。

「きききき緊急速報でぇす~うううう!!」

騒いでいるのは腰ぎんちゃく鉄平だ。
こいつはことあるごとにチャライ。
自分はクラクラ日本公式リーダー大和川満の右腕だと信じている。実際は左足小指程度なのだが。

どうしたんです?
小鳥遊は問いかける。

「いま、本国公式からの緊急メンテ情報が!」

え?
さっそく本国公式のツイッターを確認する。
確かに今日メンテがあるとのツイートがある。

「大和川リーダー、早く本国に確認を!」
満はうむと頷くと早速メールを打つ。

メーデーメーデーこちら満。
先ほど貴殿のツイートにてメンテ情報確認。詳細を連絡されたし。

残念なことだが、
本国公式とやりとりできるのは満だけ。
そしてその方法もメールと限られている。

これではユーザーに有意義な情報を十分伝えきれない、と小鳥遊は思うのだが仕方ない。

これが我々日本公式ができる今の最善なのだ。
そもそもなぜ満しか本国公式と連絡が取れないのか。途中入社の小鳥遊には知らされていない。

うちは分からないことだらけだ…。

小鳥遊はツイッターでメンテナンス情報を流す。
と、ふとひとつのDMに目が留まる。
ポチョムキン所属のクリプロリーダークロロとのやりとりだ。

たしか先日彼をフォローした後、特にコンタクトを取っていなかったはずだ。

公式という立場でフォローするならば、少なくともひとことDMでその趣旨と今後のかかわり方など簡単に説明すべきだ。と小鳥遊は月例会議で主張したのだが満には聞き入れられなかった。

「今は、動く時ではない。」と満が言うと、「動かざること壁ドンゴーレムのごとしィ」と調子を合わせてくる鉄平うざい。

DM内容を確認したところどうやらクリプロは、3月2日にとある運動を開始するとのこと。

3月2日に何か仕掛けるらしい(2回言った)
3回言っとこう。3月2日は注目な。

しかし我々公式チームの回答は、なんてことだ!

これ、満は承認しているのか。
いくらポチョムキンフォローを認めない満でもこんな返信許すはずがない。ならば…鉄平か。

「こおら鉄平!これどういう事?」

「満さんならこうするはずです。ポチョムキン撲滅です。」

本気でそう思ってるのか、
おめでた過ぎて溜息しか出ない。
この男を公式チームに残す満の意図が判らない。

早速満に報告だ。
「大和川リーダーは?」
「先ほど大阪出張に出られた」

「鉄平…これはそろそろかな」
良子のメール報告に、満はつぶやいた。

日本クラクラ公式を立ち上げて早5年。
その5年間でいろいろなことが起こった。
「もう5年になるのか」
そう、あの日から5年たつのだ。

満は大阪出張のために品川からの新幹線に乗っていた。

働いても働いても給料は上がらず、サービス残業ばかりの前職にうんざりする毎日。

同僚の渡と「いっそ転職しようか」などと言っても実行できるわけもなく、日々悶々と過ごしていた。

自由席に座り、クラクラを起動する。
ダダダダ・ダン
日本にリリースされて間もなくあまり知られていないが、世界では飛ぶ鳥を落とす勢いのこのゲーム。渡に薦められたがなかなかに面白く暇を見てはプレイしている。

品川で、人がどっと増える。
ほとんどがサラリーマン、自分もそうだがご苦労なことだ。

そのサラリーマンの海の中、ひとり浮いている女性が前からやってきた。

旅行者だろうか、それにしてはきっちりとしたスーツ姿のブロンド女性。

美しい。
(となりに来い!)
念じた満が…一番おどろいた。
彼女は満の隣に座った。

などという美味しい話など世の中そう簡単にないもんだ。彼女は満の席を通り過ぎ、後方の席に座った。

ここで諦めたら試合終了でしたっけ安西先生?
俺はジャガーあらためゴブリン満。
そう簡単には財宝を逃さないぜ?

品川を出て、トイレに立つふりをする。
ポケットにはメモを忍ばせて。

ペラペーラ。ペラペラペーラ。
(私の席でお話しませんか?)

メモを渡すと、女性はすこし驚いた表情をみせた。

彼女の反応は待たずに、席にもどる満。
果報はクラクラして待て、だな。

はたして彼女は席を移動してきた!
気まぐれか、満の何かに引かれたのか。
おそらく異国での新幹線の一人旅がよっぽど寂しかったのか。

しばらくはお互いの国の話で盛り上がった。
彼女はどうも仕事で日本に来ているらしい。
これから先に来日している仲間と合流するのだそうだ。

ブロンドキュートなボンキューボンッな女性に満はクラクラした。

要旨だけではない、屈託のない笑顔。弾む会話。これは上玉だ。

そこで満は大変なことに気づく。
あと30分で施設強化完了だったはず。
すぐにでも次の施設を強化開始しないと貯めに貯めたゴールドを奪われてしまう。

(ばれないよな…)
起動して、ささっとポチるだけである。
大丈夫さ。
満はクラクラをこっそり起動する。

ダダダ・ダン!!

ああああん。
イヤホンが抜けて、大音量がダダダダん!
折角よい雰囲気だったのにやってもた。

どう切り抜けるか満が彼女の様子をうかがうと

「ペラペラペーラ(クラクラね)」
「!!!!」
「ペラペラペ(知ってるのか?)」

私の国でも流行しているわ。
彼女は満に自分の村を見せてくる。
なんと、彼女もクラクラユーザーだった。

これは満の下町ロケットが点火を始めたかと思うと、バルブシステムからなにやら漏れ始めちゃうぜ?

日本でもまだまだ見かけないクラクラ仲間がこんなところで見つかるなんて。

満は日ごろの仕事のストレスなんて忘れて彼女とのクラクラ談義に熱中した。

施設強化ポチすら忘れる始末だ。
彼女が京都で降りるまで、夢のような時間だった。

彼女が降り際に渡してくれた名刺。これがそれからの満の人生を変えたのは言うまでもない。

スーパーセル・クラクラ開発チーム
マリコ・マジナンデス

ブルブルブル。
スマホが振動する。
メールだ。

ごめんね、満。
うっかりあなたにメンテのことを言い忘れてたわ。

ほんとマリコはうっかりだね。
ところで、いま新幹線に乗ってるんだけどふと5年前のこと思い出したよ。覚えてる?

うふふ。覚えているわ。
貴方に声をかけられたとき、本当はすごくドキドキしたのよ。貴方にプロポーズされた時より、驚いたんだから。

満はスマホをそっとポケットにしまい、瞳をとじて眠りについた。

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