サンタは生憎不在にしています(木村編) | なくなぐ | クラクラ

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ここまでの”泣くなぐ”一気読み

 

帰って絵を描こう。

哲夫と良子を見ていると、自分自身の不甲斐なさに泣けてくる。
自分は一体なにをしていたのだ。

「痴漢道はね、ただ触るだけではない。
相手の心にそっと触れて、刺さった棘を抜いてやることなんだよ。」

以前哲夫にそう諭されたことがある。

何を言っているんだこの変態は。
当時は軽く聞き流したが、こういうことだったのか。

自分は哲夫に決して勝てないことを改めて痛感した。
伝説の”痴漢マエストロ哲夫”その人には。

哲夫さん、貴方は彼女の棘を抜いたんですね。

木村くんは目を疑った。 自分が捕まえたその男こそ、かつて自分が師と仰いだ”痴漢マエストロ哲夫”であった。

欲望を満たすためだけに痴漢道を歩く自分に、

「痴漢は愛がなければ」

と強く戒めた哲夫に嫌気がさし、痴漢に愛とか意味がわからないよこの童帝マスターが!!と一方的に袂を分かった。

もう3年前の話だ。
如何に袂を分かったとは言え、師匠に牙向くことは出来ない。

師匠のその手を離そうとした時、鋭い眼光で睨みつけられた。

「いいんだ、このまま」

まるで野生の獣のような、それでいて淡い恋に夢見る少女のような情熱的な眼に睨まれた木村くんはその掴んだ手を離すことが出来なかった。

(何か考えがあるのか) 哲夫がなにを考えているのかわからなかった。

捕まった痴漢は蛇に睨まれた蛙だ、ただ呆然と自分が裁かれるのを待つしか無いのだ。
なのにどうだこの哲夫の落ち着きは。

木村くんは混乱する。

「良かったら電話番号を交換しませんかッ!?」

そう叫ぶ哲夫を見て、ある予感が木村くんの中で産まれる。
もしかして…いやそんなはずは無い。しかし…

予感はやがて確信に変わった。

哲夫は恋をしている。そしてこの女も。

哲夫はもう自分の知る”痴漢マエストロ哲夫”ではないのだ。

「どういう事なんですか?師匠。何故あんな不用意に手を出して、あんなの僕でなくても痴漢と気付きます。」

良子と別れたことを確認し、木村くんは哲夫に話しかける。

「久しぶりだね、木村くん」

哲夫は木村くんの質問には答えず続ける。

「貴方の心の棘は、抜けましたか? 僕の心の棘はまだ刺さったままです。
でもその棘は痴漢道では抜けない。私はもう、その道から降りましたよ」

何を言っているんだこの変態は。確かに貴方はあの女に触れようとしたではないか。

「アレは、誤解です。私はただ、あの女性の髪の匂いをクンカクンカ…ちがう、クラクラの画面を少し覗こうとしただけですよ」

ピロリロリン 哲夫の携帯が鳴る。

良子だ。

哲夫は、46歳道程痴漢マエストロ哲夫は嬉しそうに話し始める。

そう、自分なんていないかのように。

「ああ、私です。ハイ、今から起動しようと思ってました。
そうです、猫踏んじゃったです。あ、いま申請きました。”yoshiko”ですね。
はい、承認しました。みんなにはリーダーの私からロビで紹介しています。」

……猫踏んじゃった?

………リーダー?

おま、ロマネスク?

おま、ロマネスクううううぅ??

哲夫と良子と木村くんのドラマはまだ始まったばかり。
今後ロマンんがTwitterで「あ!哲夫さんちーっす!」と声をかけられるかどうかは、今はまだ誰もわからない。

Quwrof

Quwrof

右投げ右打ちのサイドスロー中継ぎ投手。

座右の銘は「人のにぎったオニギリは味わわない」
とにかく早々に口腔を通過することに専念する。

クリプロのコンダクターでいて、LinkJPクラングループのリーダー。

特技は、活きたイカを殺すこと。
2本の指で確実に仕留める、イカ最大にして最強の敵。

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