サンタは生憎不在にしています(哲夫編) | なくなぐ | クラクラ

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NN20

ここまでの”泣くなぐ”一気読み

 

哲夫は焦っていた。

アレは木村くんだ。
あの一切笑っていない口元、何者の幸せをも認めない暗いひとみ。

アレは自分が育てた怪物”童帝丸(エンペラーサークル)”だ。

自分がまだ「痴漢マエストロ」と呼ばれていた頃、
JR環状線で周りの全てを恨むダークサイドな少年を見かけた。

ただの気まぐれだった。
不意にそのダークサイドに堕ちた少年を救い出したくなったのだ。

「痴漢道はね、ただ触るだけではない。相手の心にそっと触れて、刺さった棘を抜いてやることなんだよ。」

哲夫は恐れた。
幾度となく諭したその教えを全く理解しない一方で、
痴漢のテクニックだけが恐ろしい速度で上達していった童帝丸(エンペラーサークル)を。

だってそうだろう?道程なのに最強のテク。

あんた背中がすけて見えるぜ?
やばいやばい早くこいつを何とかしないと。

哲夫は童帝丸(エンペラーサークル)を切った。

あの日、通報したのは哲夫だ。
童帝丸(エンペラーサークル)を貶め、彼の必殺技「凛として土下座(グー)」を遠く眺めていたのだ。
哲夫は。

哲夫は目を疑った。

自分を捕まえたその男こそ、かつての弟子「童帝丸(エンペラーサークル)であった。
欲望を満たすためだけに痴漢道を歩み警察に捕まった彼に、
「痴漢は愛がなければ」と強く戒めた私に嫌気がさしたのか、
痴漢に愛とか意味がわからないよこの童帝マスターが!!と一方的に出て行ったもう3年前の話だ。

如何に弟子であったとは言え、ゴミのように切り捨てた事をもし知っていたら。
その恐れを抱いた時、哲夫は鋭い眼光で弟子睨みつけられた。

「いいんだ、このまま」

まるで納豆のような、それでいて熟女に弄ばれた道程の様な眼で睨んでいる木村くん。
その掴んだ手を離してグーで殴られたらたまったもんじゃ無い。
(きっと知っている) 木村くんがなにを考えているのかわからなかった。

哲夫は蛇に睨まれた蛙だ、ただ呆然と自分が裁かれるのを待つしか無いのだ。
なのにどうだこの木村くんの落ち着きは。哲夫は混乱する。

「良かったら電話番号を交換しませんかッ!?」

もう何が何だかとっちめちん。
とりあえず告っちゃえ。どうにでもなれだバーカ。

不安はやがて確信に変わった。

木村くんは知っているのだ。

「どういう事なんですか?師匠。何故あんな不用意に手を出して、あんなの僕でなくても痴漢と気付きます。」

良子と別れたあと木村くんは哲夫に話しかける。

「久しぶりだね、木村くん(こいつなに言ってんだ)」
とりあえずここは適当な事を言って煙に巻かねば。

「貴方の心の棘は、抜けましたか? 僕の心の棘はまだ刺さったままです。
でもその棘は痴漢道では抜けない。私はもう、その道から降りましたよ」

何を考えているんだこの変態は。
お前は全てを知って復讐を考えているのでは無いのか?

「アレは、誤解です。私は何も後ろめたいことはしてませんよ(突っ込まれたら貴方を救いたかったのですって事にしよう)」

ピロリロリン 哲夫の携帯が鳴る。

良子だ。

哲夫はドキドキしながら話し始める(んもうこの緊急時に…)

「ああ、私です。ハイ、今から起動しようと思ってました。
そうです、猫踏んじゃったです。あ、いま申請きました。”yoshiko”ですね。
はい、承認しました。みんなにはリーダーの私からロビで紹介しています。(ああんもう早く切らないと刺激しちゃう)」

ビクビクしながら木村くんの様子を伺う哲夫は、木村くんが明らかに何かに動揺していることに気づいた。

哲夫と良子と木村くんのドラマはまだ始まったばかり。
今後ロマンんがTwitterで「あ!哲夫さんちーっす!」と声をかけられるかどうかは、今はまだ誰もわからない。

QuwrofQuwrof

Quwrof

右投げ右打ちのサイドスロー中継ぎ投手。

座右の銘は「人のにぎったオニギリは味わわない」
とにかく早々に口腔を通過することに専念する。

クリプロのコンダクターでいて、LinkJPクラングループのリーダー。

特技は、活きたイカを殺すこと。
2本の指で確実に仕留める、イカ最大にして最強の敵。

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